最近の若い子はすぐ辞める。
根性がない。
我慢が足りない。
教えても響かない。

こういう言葉、ほんとうによく聞きます。

でも、あれを聞くたびに少し雑だなと思うんです。
たしかに、昔より辞めるハードルは下がったと思います。
合わなければ離れる。無理なら切り替える。
それ自体はもう時代なんでしょう。

ただ、それだけで片づけると、大事なものを見落とす。

新入社員が早く辞める会社って、厳しい会社というより、
意味が見えない会社だったりするんですよね。

ここ、結構大きいです。

人って、しんどいこと自体には、案外耐えるんです。
忙しい。覚えることが多い。気も遣う。失敗もする。
それでも、「これが何につながっているのか」が
見えているうちは踏ん張れる。

でも一番きついのは、意味の分からないしんどさです。

何のためにやっているのか分からない。
どこに向かっているのか見えない。
この仕事が、誰にどう役立っているのかもピンとこない。
怒られないようにやる。迷惑をかけないようにやる。
気づいたら、それだけになる。

これ、かなり苦しいんですよ。

社会人一年目って、できないことだらけです。
自信もない。
空気も読めない。
自分が遅れているのか普通なのかも分からない。
その状態で毎日会社に行く。
それだけで、実はかなりエネルギーを使っています。

なのに、上から渡されるのが作業だけだと、人は急に空っぽになる。

これやって。
次これ。
違う、そうじゃない。
もっと早く。
それ前も言ったよね。
確認してから動いて。
勝手に判断しないで。

もちろん必要なことです。
現場を回すなら言わないといけない。
でも、それだけだと、
その子の中に残るのは「間違えないこと」だけなんです。
働く意味じゃない。
自分の役割でもない。
ただ怒られないようにする感覚だけが残る。

その状態が続くと、ふっと切れます。

辞める理由って、表向きは色々あるんですよね。
やりたいことが見つかった。
体調を崩した。
他の業界に興味が出た。
家庭の事情。
人間関係。

もちろん本当のこともあります。
でも、その奥にあるのは意外とシンプルです。
ここで頑張る理由が、自分の中に育たなかった。

これなんです。

新入社員って、最初から高い給料を求めているわけでもない。
大きな裁量をくれと言っているわけでもない。
むしろ最初は、そんなことより、
ここで自分は何者になっていくのかを知りたいんですよね。

自分の仕事は、何につながっているのか。
この毎日の意味はどこにあるのか。
今できなくても、どこへ向かっているのか。
せめてそれくらいは欲しい。

でも、忙しい会社ほどそこを飛ばします。
育成のつもりで現場に入れる。
現場で学べと言う。
背中を見て覚えろとは言わなくても、実質そうなっている。
そしてうまくいかないと、「最近の子は受け身だよね」になる。

いや、そこじゃないんですよね。

受け身になるのは、意味が切れているからです。
人は、自分がどこに向かっているのか分からないと、
主体的にはなれない。
当たり前です。
地図のない場所で、前のめりに歩ける人なんてそんなにいない。

上司側からすると、言い分もあります。
一から十まで説明していられない。
忙しい。
そんな余裕はない。
まずは基本を覚えてもらわないと困る。
それもそうです。

でも、だからこそ余計に、意味を渡さないといけないんです。
全部を丁寧に教える必要はない。
けれど、この仕事は何のためにあるのか。
今やっている地味なことが、どこにつながるのか。
ここだけは渡したほうがいい。

たとえば、資料の誤字を直す。
会議室を押さえる。
議事録を取る。
先輩の数字をまとめる。
新人が最初にやることなんて、だいたい地味です。
正直、楽しくないものも多い。

でも、そこに意味が通ると変わるんですよね。

この数字がズレると、次の判断がズレる。
この準備が甘いと、先方の信頼が落ちる。
この議事録があるから、決まったことが宙に浮かない。
小さい仕事に見えても、
会社の信用や流れの一部なんだと分かると、人は少し踏みとどまれる。

逆に、そこがないと全部が雑務に見える。
雑務に見える仕事を、成長の実感もないまま、毎日やる。
そりゃ苦しくなります。

経営者の感覚でも、ここはかなり重要です。

社長って、つい「採用」と「定着」を別で考えがちなんですよね。
採る。
配属する。
現場に任せる。
辞めたら現場の教育不足。
この流れ、かなり多い。

でも本当は、定着って制度の話だけじゃない。
入社した瞬間から、
その人の中に“この会社で働く意味”が立ち上がるかどうかの話です。

理念を読ませればいいわけじゃない。
社長メッセージを渡せばいいわけでもない。
もっと現場の言葉です。
あなたの仕事は、ここにつながっている。
今はここを覚える時期。
でも、見ているのはその先だよ。
そういう言葉がある会社は、やっぱり違う。

逆に、意味を語れない会社は、だんだん採用も苦しくなる。
条件では集まっても、残らないからです。
残らないと現場が疲れる。
現場が疲れると育てる余裕がなくなる。
育てる余裕がなくなると、また意味を渡せなくなる。

きれいに悪循環です。

ここでよくあるズレが一つあります。

会社側は、「続けること」に価値を置く。
でも新人側は、「続ける意味」がないと続かない。
このズレです。

続ければ分かる、は半分本当です。
でも、何も見えないまま続けられるほど、今の子たちは鈍くない。
昔より情報も多い。
比較対象も多い。
我慢が足りないというより、納得できない時間に敏感なんです。

それを弱さと見るか、感度の高さと見るか。
ここで上の世代の器も出ますよね。

目的がズレると、会社はこうなります。
本当は人を育てたいのに、辞めさせないことが目的になる。
本当は戦力化したいのに、
手をかけたコストを回収したい気持ちが先に立つ。
そうなると、言葉が急に重くなる。
「せっかくここまで教えたのに」
「もう少し頑張ってみたら?」
「どこに行っても同じだよ」

その言葉で残ったとしても、心は離れます。
残ることが目的になると、人は育たない。

大事なのは、辞めないように縛ることじゃない。
ここで働く理由が、自分の中に育つ状態をつくることなんです。

そのために必要なのは、甘やかしではありません。
意味です。
地味な仕事の意味。
今の苦しさの意味。
自分がここで積むものの意味。
ここが通るだけで、同じ毎日でも手触りが変わる。

新入社員がすぐ辞めるのは、忍耐がないから。
そう見える場面もあると思います。
でも本当に怖いのは、
会社の側が「働く意味を渡す」という仕事を放棄していることです。

仕事って、給料のためだけでも続く。
責任感だけでもしばらくは続く。
でも長く人を育てるのは、最後は意味なんですよね。

あなたの職場では、新人に“やること”は渡していても、
“なぜそれをやるのか”までは渡せていますか?

世の中の非常識は、華僑の常識。
華僑Jでした。