「いつか起業したいんです」
そう言う人の目には、少しだけ遠くを見る光があります。
今の働き方だけで終わりたくない。
自分の力で価値を作りたい。
もっと自由に働きたい。
家族に安心を渡したい。
誰かに決められる人生ではなく、自分で選ぶ人生にしたい。
その気持ちは、とてもいい。
人は、自分の人生を自分で握りたいと思った時に、
少し顔つきが変わります。
ただ、起業したい人ほど、
今の会社員の時間を軽く見てしまうことがあります。
「どうせ会社員だから」
「ここで頑張っても意味がない」
「起業したら本気を出す」
「今の仕事は自分のやりたいことじゃない」
「会社の中では自由にできない」
こう思って、目の前の仕事を半分だけでやる。
でも、ここに落とし穴があります。
会社員の今を雑に扱う人は、
起業してからも自分の仕事を雑に扱いやすい。
場所を変えたら人が変わると思っている人がいます。
会社を辞めたら、本気になる。
肩書きが変わったら、覚悟が決まる。
お客様ができたら、責任感が出る。
自分の名前で仕事を始めたら、ちゃんとやる。
たしかに、環境が人を変えることはあります。
でも、環境だけに期待しすぎると危ない。
人の癖は、場所を変えてもついてきます。
返信を後回しにする癖。
数字から逃げる癖。
面倒な確認を曖昧にする癖。
苦手な人との会話を避ける癖。
約束を軽く見る癖。
学びを先延ばしにする癖。
人のせいにする癖。
会社員の時に持っていたものは、
起業しても顔を出します。
会社に守られている時は、
それでも何とかなることがあります。
上司が謝ってくれる。
会社の信用がある。
仕組みがある。
給料日が来る。
誰かが最後に確認してくれる。
お客様も、会社名を見て信用してくれる。
でも起業すると、全部自分に返ってきます。
返信が遅ければ、自分の信用が落ちる。
数字を見なければ、生活が揺れる。
確認が甘ければ、お客様に迷惑が出る。
約束を軽く見れば、次の紹介は消える。
人のせいにしても、誰も守ってくれない。
起業は、自由に見えます。
でも本当は、自由の分だけ責任が増える世界です。
だからこそ、会社員の今を捨ててはいけない。
今の職場は、自分の商売の練習場です。
給料をもらいながら、商売の基本を学べる場所です。
これは、かなりありがたいことです。
お客様がいる。
商品やサービスがある。
上司がいる。
同僚がいる。
数字がある。
会議がある。
クレームがある。
評価がある。
失敗しても、すぐに人生が終わるわけではない。
こんな環境で、いくらでも学べます。
お客様は、何に不安を感じるのか。
人は、どんな時にお金を払うのか。
上司は、何を見て判断しているのか。
会社は、どこで利益を出しているのか。
現場のミスは、どこで生まれるのか。
人が動かない時、何が曇っているのか。
信用は、どんな小さな積み重ねで作られるのか。
これを見られる人は、会社員の時間を全部教材にできます。
ただ出勤している人と、商売を見ている人では、
同じ一日でも濃さが違います。
起業したい人が、会社員の今やるべきことは、
会社に尽くすふりをすることではありません。
今の仕事を、自分の未来の土台として使い切ることです。
目の前のお客様を、本気で見る。
自分の商品ではなくても、会社の商品でも、
お客様が何に困っているかを見る。
どんな言葉で安心するのか。
どんな説明で迷いが消えるのか。
何に不満を感じるのか。
なぜ買うのか。
なぜ離れるのか。
ここを見ている人は、起業してから強い。
商売の中心は、いつもお客様だからです。
自分が何をしたいかだけでは足りません。
相手が何に困っているか。
どこに価値を感じるか。
何にお金を払うか。
どんな人なら信頼するか。
ここを見られる人が、商売を作れます。
会社員の時からお客様を見ていない人が、
起業した瞬間に急にお客様目線になるのは難しい。
今、目の前にいるお客様を雑に扱っているなら、
未来のお客様もきっとどこかで雑に扱います。
これは怖いけれど、本当です。
数字も同じです。
起業したいのに、会社の数字に興味がない人がいます。
売上。
利益。
原価。
広告費。
人件費。
リピート率。
解約率。
紹介率。
「それは上の人が見るもの」と思っている。
でも、起業したら全部自分が見ます。
数字は冷たいものではありません。
数字は、現実を教えてくれるものです。
お客様に選ばれているのか。
何にお金が流れているのか。
どこで漏れているのか。
どの商品に力があるのか。
どの動きが未来を作っているのか。
数字を見ない商売は、感覚で船を動かすようなものです。
晴れている日は進むかもしれない。
でも、風が変わった時に迷います。
会社員の今、数字を見る練習はできます。
自分の担当の数字でもいい。
部署の数字でもいい。
会社全体の流れでもいい。
上司に聞いてみてもいい。
「この数字は、何を意味しているんですか」
「どこが利益につながっているんですか」
「なぜこの指標を見ているんですか」
こういう問いを持てる人は、伸びます。
起業家の目は、会社員の時から育てられます。
人間関係もそうです。
起業すれば、好きな人とだけ仕事ができる。
そう思っている人がいます。
半分は本当です。
でも、最初から完全にそうはいきません。
合わないお客様もいる。
厳しい取引先もいる。
頼った人に断られることもある。
思ったように動いてくれない人もいる。
協力者とのズレもある。
人と仕事をする以上、人間関係の力は必要です。
会社員の今、苦手な上司や同僚との関わり方からも学べます。
どう伝えれば動いてもらえるのか。
どこまで期待して、どこから仕組みにするのか。
感情的にならずに基準を伝えるにはどうするのか。
違う価値観の人と、目的に戻って話すにはどうするのか。
これも商売の力です。
「あの上司が嫌い」
「あの同僚が使えない」
「あの会社はわかっていない」
そう言うだけで終わる人は、
会社の中で学べるものを捨てています。
嫌な人も、教材になります。
自分は何に反応しているのか。
どんな伝え方だと人は閉じるのか。
どんな上司にはついていきたくないのか。
自分が人を使う立場になった時、何をしてはいけないのか。
そこまで見られたら、嫌な経験にも意味が出ます。
もちろん、今の会社が本当に合わないこともあります。
心身を壊すような場所。
不誠実なことを強いられる場所。
明らかに成長が止まる場所。
尊厳を削られる場所。
そこに無理して居続けろという話ではありません。
逃げるべき場所もある。
ただ、辞める前に見たいんです。
自分は、この場所から学べるものを本当に取り切ったのか。
不満だけを持って出るのか。
学びを持って出るのか。
この差は大きい。
不満だけで辞める人は、次の場所でもまた不満を見つけます。
学びを持って出る人は、次の場所で使える武器を持っています。
起業も同じです。
会社への不満だけで起業すると危ない。
「上司が嫌だから」
「会社に縛られたくないから」
「評価されないから」
「自由になりたいから」
「人に指示されたくないから」
これだけだと、起業後にぶつかります。
なぜなら、起業は不満から逃げる場所ではなく、
価値を作る場所だからです。
会社員の不自由さから逃げても、
お客様への責任からは逃げられません。
上司はいなくなります。
でも、お客様がいます。
市場があります。
お金の現実があります。
自分の甘さがあります。
毎月の支払いがあります。
自由になったはずなのに、前より不自由になる人もいます。
それは、自由を支える土台を作らないまま外へ出たからです。
自由には、器がいります。
その器は、会社員の今から作れます。
時間を守る。
約束を守る。
数字を見る。
お客様を見る。
小さな改善を続ける。
苦手なことから逃げすぎない。
自分の仕事に責任を持つ。
人に価値を届ける練習をする。
これが、起業の準備です。
派手ではありません。
でも、強い。
起業準備というと、ロゴを作ったり、SNSを整えたり、
サービス名を考えたり、人脈を広げたりすることを想像する人がいます。
それも必要な時はあります。
でも、その前に、仕事の基準です。
自分は信頼される仕事をしているか。
相手の期待を超える工夫をしているか。
お金をいただく感覚を持っているか。
人の時間を大切にしているか。
不安な時でも逃げずに見ているか。
言われたこと以上に、目的を見て動けているか。
ここが弱いまま見せ方だけ整えても、長くは続きません。
商売は、ごまかしが効きそうで効きません。
一度買ってもらうことはできても、続くかどうかは中身です。
紹介が起きるかどうかも、中身です。
困った時にまた声をかけてもらえるかも、中身です。
その中身は、日々の仕事の姿勢で作られています。
会社員の今は、起業の反対側ではありません。
起業の土台です。
ここを勘違いしない方がいい。
会社員だから下。
起業家だから上。
そんな単純な話ではありません。
会社員でも、人生のオーナーとして働いている人はいます。
起業していても、誰かの評価や売上に振り回されて、
軸を失っている人もいます。
肩書きではなく、見方です。
自分の時間をどう使うか。
今いる場所から何を学ぶか。
どんな基準で仕事をするか。
どこに価値を置くか。
どんな信用を積むか。
ここに、オーナー思考が出ます。
起業したいなら、会社員の今を捨てない。
今の仕事を、ただの給料のためだけにしない。
上司の指示を、ただの面倒なものにしない。
お客様対応を、ただの作業にしない。
会議を、ただの時間の浪費にしない。
数字を、ただ上に報告するものにしない。
全部、自分の未来の材料にする。
そう思える人は、同じ会社員でも見ている世界が違います。
周りが愚痴を言っている時に、学びを拾う。
周りが流している仕事で、信用を積む。
周りが見ていない数字から、商売を読む。
周りが嫌がるお客様対応から、人の心理を学ぶ。
こういう人は、独立してもしなくても強くなります。
最後に残るのは、肩書きではありません。
自分の中に育った基準です。
会社員の今をどう使うかで、未来の自分の器は変わります。
「いつか起業したい」と思うなら、
今の仕事を軽く扱わないことです。
今の仕事の中に、未来の商売の種があります。
見ようとすれば、いくらでもある。
お客様の一言。
上司の判断。
数字の動き。
同僚とのズレ。
クレームの裏側。
小さな信用の積み重ね。
それを拾える人が、次の場所でも強い。
起業は、会社を辞めた日に始まるのではありません。
今日の仕事の見方を変えた日から、もう始まっています。
あなたが今いる会社や仕事の中には、
未来の自分の商売や人生に使える学びが、
まだどれだけ眠っていますか?
世の中の非常識は、華僑の常識。
華僑Jでした。