部下が本音を言わないんです。
そういう相談、けっこう多いんですよね。
会議でも静か。
「何かある?」と聞いても、「大丈夫です」「特にないです」で終わる。
1on1を入れても、当たり障りのない話しかしない。
こっちは歩み寄っているつもりなのに、向こうが壁を作っているように見える。
だから上司は、だんだんこう思いはじめます。
この子は本音を言わないタイプなんだな、と。
ただ、この見方は危ないです。
そこで話を止めると、職場はずっと同じ空気のままだからです。
本音を言わない部下がいる。
たしかにそう見える。
でも、もっと正確に言うなら、本音を言うだけの意味を感じられない職場に
なっていることのほうが多い。
人は、安心したから本音を言うわけじゃないんですよね。
ここ、勘違いされやすいところです。
優しい上司だから話す。
ニコニコしているから話す。
否定しないから話す。
そんな単純なものじゃない。
人が本音を出すのは、この人に言っても大丈夫、と思えた時だけじゃない。
言ったほうが前に進む、と思えた時です。
ここがない職場では、人は黙ります。
たとえば、部下が勇気を出して何か言った時。
「でも、それは現実的じゃないかな」
「気持ちはわかるけど、今は優先順位が違う」
「それ、前にも言ったよね」
言っていることは間違っていないんです。
むしろ正しい。
管理職として、現実に戻す必要がある場面もある。
ただ、その正しさが続くと、人は学習します。
ああ、この場所では、思ったことをそのまま出すより、
怒られない形に整えてから話したほうがいいんだなと。
そうなると、本音は消えるんじゃない。
奥に引っ込みます。
出さないほうが得だとわかるからです。
怖いのはここからです。
上司は「もっと本音で話してほしい」と言う。
部下は「このままだと面倒だな」と感じる。
表では会話しているのに、大事なことだけが出てこない。
職場って、こういう静かな断絶がいちばん厄介なんですよね。
同僚同士でも同じです。
本音を言うと空気が悪くなる。
指摘すると、関係が気まずくなる。
だから、みんな薄く合わせる。
表面は穏やかです。揉めない。
でも、こういう職場は、ある日いきなり崩れます。
いきなり辞める。
いきなり関係が切れる。
いきなり爆発する。
ずっと前からズレていたものが、
言葉にならないまま溜まっていただけなんです。
部下が本音を言わないのは、部下の性格の問題。
そこにすると、上司は楽です。
自分の責任じゃないから。
でも、そこで終わる上司の下では、たぶん誰も本音を言わなくなります。
じゃあ、誰が悪いのか。
この問い、少し乱暴なんですよね。
悪い人を決めても、職場の空気は変わらないからです。
見るべきなのは、誰が悪いかじゃない。
何が本音を出しにくくしているかです。
上司が強すぎるのかもしれない。
正しさが早すぎるのかもしれない。
言ったあとに、ちゃんと拾われる感覚がないのかもしれない。
あるいは、部下の側も「察してほしい」が強くて、
言葉にする責任から逃げているのかもしれない。
ここは両方ある。
ただ、職場の空気を変える責任は、やっぱり上にあるんです。
なぜか。
上にいる人の態度が、その場の基準になるからです。
部下は、上司の言葉そのものより、反応を見ています。
意見がズレた時にどうなるか。
都合の悪い話が出た時に、顔が曇るのか。
耳の痛いことを言われた時に、空気が止まるのか。
そこを見て、この職場でどこまで話していいかを決めています。
「何でも言って」と言いながら、不都合な話が出た瞬間に詰める上司の前では、
誰も本音なんて言いません。
「率直に話して」と言いながら、結論が気に入らないと不機嫌になる上司の前でも、
誰も言わない。
人は言葉じゃなくて、空気に従います。
だから、本音が出ない職場の原因は、だいたい仕組みより先に空気です。
経営でも同じです。
社長が「もっと現場の声を上げてほしい」と言う。
でも、上がってきた声に対して、
「それは視座が低い」「経営をわかってない」で返していたら、
次から誰も本当のことは言わなくなる。
報告は上がる。
数字も上がる。
でも、本当に危ない話だけは最後まで上がってこない。
これ、組織としてかなり危険です。
本音が出る職場って、優しい職場じゃないんですよね。
甘い職場でもない。
厳しいことを言ってもいい。
基準が高くてもいい。
ただ、出てきた言葉を、その場で潰さない。
そこに一回、置ける。
この違いが大きい。
上司の仕事は、みんなに好かれることじゃない。
本音が出ても壊れない場をつくることです。
ズレた意見が出ても、未熟な考えが出ても、そこで話を終わらせない。
正しさでねじ伏せるんじゃなくて、目的に戻して扱う。
その積み重ねでしか、職場に本当の意味での信頼は生まれません。
部下が本音を言わない。
その時に見るべきなのは、相手の性格じゃない。
この職場では、本音を言う意味があるかどうかです。
あなたの職場では、本音を出した人が損をしない空気になっていますか。
それとも、言わないほうが賢い場所になっていませんか。
世の中の非常識は、華僑の常識。
華僑Jでした。