今回は【孫子兵法から学ぶリーダーの五つの条件】
智(智恵)、信(信用)、仁(思いやり)、勇(勇敢)、厳(厳格)のうち、最後の【厳】について掘り下げてみたいと思います。
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【孫子兵法から学ぶ リーダーの五つの条件】
⑤厳(厳しさ)
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5、厳(厳しさ)
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リーダーとしての永遠のテーマ。
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それは、
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【優しさと厳しさのバランス】
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これに尽きるのではないでしょうか?
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その厳しさをどうとらえ、どう扱うか?
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今回はこの事について深掘りしましょう。
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1、制度・ルール
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残念ながら、人徳だけでは天下を取れません。
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どんなに人格者の将軍の元でも、一人や二人くらいの裏切り者や、逃げる兵士が現れます。
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どんな組織だとしても、時には【制度やルール】が道徳より有効な局面があるのです。
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そもそも、【制度・ルール】とは?
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それは組織の創設者の
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・世界観
・価値観
・人生観
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などを反映するものです。
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なので、
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会社の制度はその会社のポリシーを反映しており、
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さらには、
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その組織の知識・認知のレベルも反映しています。
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ルールという言葉には縛られるようなイメージがありますが、
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良いルールは人の心中の善を引き出し、悪を防ぐ働きがあります。
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そして、そのルールを実行するための必須条件が、
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【リーダーの厳しさ】なのです。
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呉の王と孫子のエピソード
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このことがよくわかる、呉の王と孫子のエピソードがあります。
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呉の王、闔閭(こうりょ)は、孫子を呉の将軍として迎え入れたいと思っていました。
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そして、彼の兵法がどこまで実践的なものなのかを確かめるため、
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「女性でも軍隊を編成することができるか?」
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という、当時ではありえないチャレンジを孫子に与えます。
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孫子はすぐに女性兵士を180人ほど集めて二組に分け、王の二人の寵姫をそれぞれの隊長に任命しました。
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そして全員に剣を与え、孫子の太鼓に合わせて行動するように指示したのですが、二人の隊長はそれを笑い、孫子の言うことを聞きません。
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孫子は「自分の伝え方が悪かった」と改めて、指示を出しました。
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しかし、二人の隊長は孫子のことを馬鹿にしていて、その指示に従いません。
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そこで、孫子は側近の者に尋ねます。
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「隊長が将軍の指示に従わなかった場合の処罰は何か?」
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側近の者からは、
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「軍法(規則)では死罪です。」
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と返ってきたので、孫子はその二人の隊長を死刑にしたのです。
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その後新たに二人の隊長を選び、再度孫子が指示を出したところ、女性兵士たちはとても統率のとれた軍隊になりました。
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呉の王は寵姫の死刑に激怒はしたものの、その後、孫子を呉の将軍として迎え入れました。

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ここで重要なのは、
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・身分、立場にとらわれない。
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・好き、嫌いなど感情的要素を除外する。
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という判断を、呉の王も、孫子も、しているという事。
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どちらも自分の立場を自分の都合良く使ってはいません。
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そうでないとルール自体の意味が無いし、リーダーの信用も無くなるからです。
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厳しさの対象は【事】
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ただ、厳しさをはき違えてはいけません。
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現代には「パワハラ」という言葉がありますが、
「厳しさ」とは違うという事です。
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では、パワハラにならないようにどう気をつけるべきか?
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それは、
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【事】に対して議論するが、
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【人】に対して議論しないことです。
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例えば、
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「こんな簡単な事も出来ないの?何のためにあなたを雇ってると思ってるの?」
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これはダメです。
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これは【人】に対しての攻撃になっています。
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「〇〇が出来ていないので、それについてちょっと話したいと思います。あなたがつまづいている問題点はどこにありますか?」
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これは指導です。
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問題解決、つまり【事】にフォーカスしています。
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他にも、
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「これぐらいのトラブルで暗い顔しないで!同期の田中さんは出来るのに、なんであなたは出来ないの?」
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これは、人に感情があることを否定して、しかも他のスタッフと無意味な比較までしています。
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「感情コントロールも仕事の一部ですよ。でも今は話し辛いだろうから、ちょっと落ち着いたらあらためてお話ししようか?」
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これは、厳しくすると同時に人には感情の波があるという事を認めている。
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「難しいかどうかは知らないよ!それはお前の仕事だろ?できなければやめろ!」
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これはダメ。過剰な要求をしながら、サポートをしていません。
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「難しいのはわかってるけど、なんとかやって欲しい。もしサポートの必要があれば、いつでも相談してください。」
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これは、自分も要求しているけど、あなたの要求も飲んでいます。
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そろそろ、パワハラと厳しい指導の共通点と相違点が見えてきましたか?
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まとめると、こういう事です。
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共通点
【言われるの嫌だなぁと感じさせてしまう】こと。
相違点
【問題は言われたあなたのほうにあると認識させる】こと。
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ここのところは一歩間違うと、指導どころか信頼を失ってしまいますので、しっかり理解してください。
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自分基準の厳しさは論外
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絶対やってはいけないのは自分基準の厳しさです。
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例えば、若いころに自らが受けた理不尽な経験を、部下ににも強要する人が居ます。
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「俺が若い頃はもっと厳しいことをやらされてきた。それに比べたらこのくらい当然だ。」
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私はサラリーマン時代、体育会系のノリがある会社にいました。
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よく上司の武勇伝を聞かされましたし、理不尽な要求も多かったのでよく戦っていました。上司からすれば生意気な部下だったと思います。
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当時は口にこそしませんでしたが、
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「あなたが経験した事が基準っておかしくない?今の状況において適切かどうか?会社の目的や目標にとって意味があるかどうかこそ、判断基準にすべきじゃないの?」
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そんな風に思っていました。
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自分が大変だった事、当時感じた「痛み」を次世代に引き継いではいけません。それはただの【部下いじめ】です。
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もっというなら、
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自分が若いころに味わった【理不尽な痛みを改善する事】こそが、リーダーの仕事だと思います。
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まとめ
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確かに、仕事は甘くない。仕事を舐めてはいけない。
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若い人達に、その厳しさにしっかりと向き合ってもらう為に、何が必要なのか?
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客観的な判断基準、そして、リーダーとして下した決断に対して、厳格に実行する。
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可愛い後輩だろうが、付き合いが長いパートナーだろうが、一緒に創業してきた初期メンバーだろうが、その厳しさを貫く事こそが、真の意味で相手を鍛える事になるのです。
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そして、人間は自分の限界値に挑まないと真の成長はできない。
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その限界値に挑むには外部要因が必要。
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それには「厳しさ」が絶対に必要なのです。
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その厳しさを、愛を持って戦略的に使う事。
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これこそがリーダーに求められている事ですよ!
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世の中の非常識は華僑の常識。華僑Jでした!