同じことを言ってるはずなのに、
なぜか仕事が進む人と、なぜか止まる人がいます。
能力の差みたいに見えるんですけど、
あれ、案外そこだけじゃないんですよね。
仕事が進む人って、話が特別うまいわけじゃない。
すごく説明が上手いわけでもない。
でも、相手の中にちゃんと残る。
ここが違う。
たとえば、上司が部下に「これ急ぎでお願い」と言う。
職場ではよくある一言です。
言った本人は、ちゃんと伝えたつもりなんですよね。
急ぎなんだから急いでくれるだろう、と。
でも、受け取る側は意外とバラバラです。
今日中なのか。
午前中なのか。
他の仕事を止めるほどなのか。
先方が待っているのか。
ざっくり早めでいいのか。
頭の中で描く景色が違う。
だから、あとでズレる。
「いや、そんな悠長な感じじゃなかったよ」
「先にこっちをやってほしかったんだよね」
「急ぎって言ったじゃん」
言った。たしかに言った。
でも、伝わったかというと別なんです。
ここが、仕事が止まる人と進む人の分かれ道なんだと思います。
止まる人は、言葉を出したところで一区切りつけます。
言った。送った。共有した。
だから自分の仕事は終わり。
この感覚です。
でも、進む人はそこで終わらない。
相手の頭の中にどう残るかまで見ている。
この案件は、今日の12時まで。
理由は、先方が午後に社内確認を入れるから。
今抱えている他の仕事より、こっちを先に。
もし間に合わなさそうなら、11時の時点で一回教えて。
ここまであると、急に景色がそろう。
別に話がうまいわけじゃないんです。
ただ、相手が迷いそうなところを先回りしている。
だから進む。
コミュニケーションって、
つい“うまく話すこと”だと思われがちですよね。
でも、現場で本当に効くのはそこじゃない。
相手が動ける形まで責任を持つことなんです。
ここを勘違いすると、わりとしんどいです。
会議で話した。
チャットにも流した。
資料にも書いた。
だから共有できている。
そう思っているのに、現場は動いていない。
で、イライラする。
でも、そのイライラの中身をよく見ると、
「自分は言ったのに」がかなり入っている。
つまり、伝えた自分を基準にしてしまっている。
本当は逆なんですよね。
見るべきなのは、相手に何が残ったかです。
この感覚を持っている人は強いです。
仕事でも、人間関係でも。
たとえば、同じ会議に出ていても、
終わったあとにひと言入れる人がいます。
「さっきの件、つまりAさんは明日までにたたき台で、
Bさんは来週の数字整理ですね」
こういう人、いるじゃないですか。
派手じゃない。
でも、ものすごく効いてる。
みんなの頭の中に残る形へ整えているからです。
会議って、その場にいたことと、
同じ理解になることが全然別なんですよね。
聞いた。頷いた。
でも持ち帰るものは、人によってかなり違う。
社長は決まったつもり。
部長は検討事項だと思ってる。
現場は、まだ保留の話だと思ってる。
こういうの、ほんとによくあります。
それを防ぐのって、結局は“伝えたかどうか”じゃない。
“同じ絵が残ったかどうか”なんです。
ここをちゃんと見ている人は、無駄に賢そうな話し方をしません。
むしろシンプルです。
締切はいつか。
優先順位は何か。
どこまでやればいいか。
困ったらどの段階で返せばいいか。
このへんを曖昧にしない。
それだけで、仕事って驚くほど進みます。
逆に、止まりやすい人は、いいことを言うんですよね。
でも、ちょっとふわっとしている。
「いい感じでお願いします」
「なるはやで」
「一回整理しておいて」
「顧客目線で考えて」
言ってることは間違ってない。
でも、そのままだと人によって解釈がズレる。
ここが積もると、チームはじわじわ疲れます。
誰かが悪いわけじゃない。
でも何か噛み合わない。
毎回ちょっとずつズレる。
あとで直す。
確認し直す。
言い直す。
それで時間も気力も飛んでいく。
仕事って、難しい業務より、
この小さなすれ違いのほうが体力を削ることがあるんですよね。
上司と部下でも、かなり差が出ます。
部下が育つ上司って、教えるのがうまいというより、
受け取り方を見ている。
この子は背景まで渡したほうが動きやすいなとか。
この子は結論からのほうが迷わないなとか。
ここは期限を数字で言わないとズレるなとか。
ちゃんと見てる。
だから、同じ「お願い」でも残り方が違う。
一方で、部下が育ちにくい上司は、
自分が言った内容だけで満足しやすい。
ちゃんと説明した。
会議でも触れた。
メッセージも送った。
なのに何でできてないの、となる。
でも、その間に抜けてるんです。
相手の頭の中でどう翻訳されたか、が。
ここを見ないままだと、だんだん関係も苦しくなります。
上司は「なんで分からないんだろう」になる。
部下は「何を求められてるか分かりにくい」になる。
お互い悪人じゃないのに、空気だけ悪くなる。
もったいないですよね。
経営でも同じです。
社長が何度も同じことを言っているのに、会社が変わらない。
理念も話している。
方針も出している。
数字も見せている。
でも現場が動かない。
こういうとき、
社長はつい「もっと伝え方を変えないと」と思いがちです。
もちろんそれもある。
でも、本当に大事なのは、現場の仕事に翻訳されているかなんです。
「もっと顧客目線で」
いい言葉です。
でも、現場は何を変えればいいのか。
返信速度なのか。
提案の順番なのか。
断るときの言い方なのか。
そこまで落ちないと、ただのいい話で終わる。
いい言葉って、便利なんですけどね。
便利すぎて危ない。
誰も反対しない。
でも、誰も同じものを見ていない。
それだと動きようがない。
仕事が進む人は、その“いい話”を現場の言葉まで落とします。
今日、何をするのか。
何をやめるのか。
どこを優先するのか。
何を見れば判断できるのか。
そこまで持っていく。
たぶん、この差って思いやりなんだと思うんです。
やさしくする、とか、気を遣う、とか、そういうことだけじゃなくて。
相手が迷わないように、受け取るところまで想像する。
そこまでやる。
それって、かなり思いやりですよね。
自分が言いやすい形で終わらない。
相手が動きやすい形まで運ぶ。
そのひと手間を面倒くさがらない。
これができる人は、仕事が進む。
周りも動きやすい。
無駄なストレスも減る。
信頼もたまる。
派手じゃないです。
でも、強い。
伝えるって、口から出した時点ではまだ半分なんですよね。
相手の中で形になって、初めて仕事になる。
だから、本当に仕事が進む人って、
“説明がうまい人”というより、“残し方がうまい人”なんだと思います。
最近あなたが誰かに伝えたこと、ちゃんと届いていましたか。
それとも、自分の中で「言った」で終わっていませんでしたか?
世の中の非常識は、華僑の常識。
華僑Jでした。