経営って、上に行けば行くほど自由になると思われがちですよね。
好きに決められる。
最終判断もできる。
誰かの顔色だけ見て動かなくていい。
たしかに、そう見える瞬間はあります。
でも実際は、その逆だったりします。
立場が上がるほど、言えなくなることが増える。
弱さも、迷いも、不安も、うかつに出せなくなる。
社員の前では、なおさらです。
だから経営者は孤独になる。
そう言うと、だいたい「責任が重いからですね」で片づけられます。
もちろん責任は重いです。
軽いわけがない。
でも、あの孤独って、それだけじゃないんですよね。
もっと厄介なのは、理解されにくくなることです。
同じ景色を見ている人が減っていく。
ここなんです。
売上の話をしていても、見ているものが違う。
社員は今月の数字を見る。
経営者は三か月後の資金繰りも見る。
幹部は現場の疲弊を見る。
経営者は、その先で起きる採用難や退職の連鎖まで見る。
同じ会議にいて、同じ言葉を使っているのに、
頭の中で見ている時間軸が違う。
だから、会話していても、どこか一人なんです。
しかも、経営者って強く見られますよね。
見せようとしている部分もあると思います。
弱い顔を見せたら不安が広がる。
迷っている顔を見せたら、現場の足が止まる。
だから、ある程度は背負うしかない。
表では平然としている。
大丈夫な顔をする。
決め切る。
その姿勢自体は必要です。
ただ、その姿勢を続けていくと、だんだん誰も本当の心配をしなくなる。
この人は強いから。
この人は何とかするから。
そう見られるようになる。
気づくと、頼られることは増えるのに、寄りかかれる場所は減っていく。
これ、かなりしんどいです。
社員からすると、社長は決める人です。
幹部からすると、社長は見えている人です。
取引先からすると、社長は腹をくくる人です。
でも社長だって、人間なんですよね。
全部見えてるわけじゃない。
不安もある。
判断を間違える怖さもある。
それでも、外には出しにくい。
ここで一番つらいのは、助けてほしい時に、
助けてと言いにくいことかもしれません。
経営が苦しい時って、相談相手がいても孤独です。
数字を見せれば、アドバイスはもらえる。
でも、本当にしんどいのは数字そのものじゃない。
この判断で誰かの人生が変わるかもしれない、という重さです。
採用するか。
切るか。
出店するか。
引くか。
価格を上げるか。
据え置くか。
その一つひとつの裏に、人の生活が乗っている。
ここが重い。
しかも経営者は、正解がない中で決めることが多いんですよね。
現場は、ある程度見えてから動ける。
でも経営は、まだ見えていない段階で決めないといけないことが多い。
情報が足りない。
未来も確定していない。
でも、決める。
この仕事を続けていると、どんどん人に話しにくくなる。
説明しにくいからです。
まだ起きていない未来の話をしているので、周りには伝わりにくい。
「そこまで考えなくても」
「大丈夫じゃないですか」
そう返されることもある。
悪気はない。
でも、余計に一人になります。
経営者が孤独になるのは、責任感が強いからでもあるけど、
自分が見ている景色を、そのまま受け取ってくれる相手が
減るからでもあるんです。
ここ、社員時代にはなかなかわからないと思います。
社長は強い。
社長は冷静。
社長はいつも決めている。
外から見るとそう見える。
でも中では、かなり静かに揺れていることがある。
それでも顔に出さないだけだったりする。
もう一つあるんですよね。
経営者の孤独を深くするもの。
それは、自分が弱音を吐いた瞬間に、
周りの空気が変わることを知っていることです。
社員って、上の空気を見ています。
社長が迷っている。
社長が疲れている。
社長がこの事業に確信を持てていない。
それを感じた瞬間、現場の温度は変わる。
いい悪いではなく、変わるんです。
だから、軽々しく出せない。
本当は不安でも、「いける」と言うしかない場面がある。
ほんとうはきつくても、「大丈夫」と言うしかない日がある。
その積み重ねで、孤独は深くなります。
ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、孤独が悪いわけじゃないということです。
上に立つ以上、ある程度の孤独は避けられない。
全部わかってもらおうとするほうが無理があります。
むしろ、全部共有しようとすると、組織は不安定になります。
問題は、孤独そのものじゃない。
孤立です。
誰にも本当の話ができない。
自分の迷いを点検できない。
判断の重さを一人で飲み込み続ける。
ここまでいくと危ない。
視野が狭くなるし、意地も強くなる。
誰の言葉も入らなくなる。
そして経営者は、孤独より先に、硬くなるんですよね。
ここから会社も苦しくなっていく。
だから経営者に必要なのは、孤独を消すことじゃない。
孤立しないことです。
ちゃんと本音が言える相手を持つ。
強がらずに考えをほどける場を持つ。
「社長」じゃなく、一人の人間として話せる時間を持つ。
それがあるだけで、判断の質ってかなり変わります。
背負うものが軽くなるわけじゃない。
でも、ひとりで抱えて変な形に固まらなくて済む。
経営者って、みんなの前では強くないといけない場面があります。
それは事実です。
ただ、ずっと強いままでいられる人なんていません。
どこかでちゃんと力を抜けないと、強さはだんだん無理に変わる。
無理は、いつか組織ににじみます。
経営者が孤独になるのは、責任が重いからだけじゃない。
見ている景色が変わるから。
言えないことが増えるから。
強く見られるから。
そして、その強さの中で、本当の自分を置いていく時間が長くなるからです。
あなたは今、責任を背負っているからしんどいんですか。
それとも、ほんとうのことを話せる相手がいないまま、
ずっと強い顔を続けてしまっていませんか。
世の中の非常識は、華僑の常識。
華僑Jでした。